垂直の4分の1波長 HF アンテナ3種類
英国のDX Commander Expedition をフレンド局と共同購入。これをベースに、自分の環境に合わせて現在、計3種類の垂直4分の1波長HFアンテナを設置・運用中。
そもそもなぜλ/4かというと、Dipole ant.と比してエレメントの総延長が半分になることと、垂直に設置することの2点の、設置面積を少なくする利点がある。さらにバランが不要になり、同軸ケーブルから即座にアンテナエレメントを繋げることができる手軽さと安価さが得られる。
用語の定義: Definitions and abbreviations
DXC-ME:オリジナルのDX Commander Expeditionを改変し、3階屋上に設置。したがって給電点は約10m。DX Commander Modified Expedition と言うことで、これをDXC-MEと命名。
HIRO-C1:全て自作し、DXC本来の地上設置、すなわち給電点は0mとした。これをHiro Commander-1 と言うことで、HIRO-C1と命名。
HIRO-C2:全て自作し、金属製の物置をアースとし地上高約2mに給電点を設置した。これをHiro Commander-2 と言うことで、HIRO-C2と命名した。
それぞれの狙い、マウントの構造図、写真、などについては、量がかなりになるので、後ほど順次、追加していきたいが、まずは書けるところから始める。
§1 DXC-ME
§1-1 狙い
購入したDXC-E の部材を上記の3箇所のどこに展開するかが、最初に検討しなくてはならない項目だった。海外のように十分な広さの庭があったり、または公園などでの移動運用であれば、オリジナルのDXC-E のやり方で良い。しかし当局のホームの文京区の環境で、10m のポールを一瞬上げることはできても、屋上に半固定状態で展開することは、絶対に無理だ。フレンド局の屋外運用でも、フルに伸ばしたポールが突然外れ、ダダーと一気に地面に落ちる可能性が指摘されている。数時間であれば基本的には持つよう設計されているが、想像だが12時間とかは上記理由でのポール破壊のリスクが高くなる。これは避けねばならない。
アンテナエレメントの長さは各バンド、λ/4 を確保する必要があるから、ポールがそこまで伸ばせない環境で導き出される答えは以下の内容だった。
1: ポールは2段程度、1.4m程度に展開する。
2: ポールの垂直保持は、絶縁性を有する木製マウントを別途、作成する。
3: 各アンテナエレメントは絶縁性を有するプラスティックの紐で吊り下げる。
4: アースはオリジナルの ground radials と同等の形状で、まずは試してみる。その測定とデータ解析が終えた後に、他の形状のアースを試す順番とする。
§1-2 運用周波数は14, 18, & 21MHz
DXC-ME でどのバンドのエレメントを張るかは、実際にプラン&トライを繰り返さなければ、答えは最初から用意されていない。なにせ、鉄骨構造の建物の3階屋上なので、どういう共振が起こるかはやってみないとわからない。最終的な答えが得られたわけではないが、現状では以下のバンドで展開している。
14MHz 約 5.3m
18MHz 約 4.1m
21MHz 約 3.5m
§1-3 概要の図面
以下、Fig.-1 に立面図の全体像を示す。
Fig.1 Elevations of DXC-ME, a general image
以下、Fig.-2 にDXC-ME の木製マウント部分の拡大立面図を示す。
Fig.-2 Enlarged elevations of DXC-ME
以下、Fig.-3 にDXC-ME の木製マウントとラジアルアースの平面図を示す。
Fig.-3 Plans of DXC-ME with a wooden mount
§1-4 制作
§1-4-1 試作
以下、実際の写真を掲載するが、最終的に採用しない部分もあったので、実情と異なっている部分が存在する。
Pic.-1 Part of wooden parts of DXC-ME mount
上の写真は、使用した木材パーツの一部。2 x 4 の部材で枠組みし、穴を開けた板2枚で、DXC-ME ポールをその枠に通してマウントする構造。穴あけは部材を購入した hardware shop の工作部門で実施してもらった。このサイズの穴あけの機会はそうあることではなく、高価なドリルの歯を購入するまでは無いと判断した。
Pic.-2 Planing stage of general structure
上の写真は、基本の部分を止めずに配置してみて、うまくいきそうかどうか検討している段階
Pic.-3 Planning stage of the whole idea. Not screwed at all at the stage.
上の写真は、ネジ等による仮止めを一切せずに、単に部材を積み木のように載せて組んでみたところ。これで大まかな方向性が間違っていないことを確認。最終的には、両サイドの釣竿は使用せず、真ん中の DXC-E 1本を2段使用で行こうと思った。
この木製キューブマウントの一辺は、概ね一辺 900 mm 。垂直に積み上げた部分は積み上げた部材分だけ高くなる。2 x 4 (ツーバイフォー) なので、その厚さは40mm 弱だ。2×4 を採用した理由は、単純に安価だったことと、今回の目的にそれなりの強度が得られると感じたから。
§1-4-1 本制作と設置
Pic.-4 Mount for DXC-ME at the roof
上の写真は、屋上に部材を上げ、L字金具とネジでキューブ形状を固定したところ。斜めの筋交が無いとねじれに弱いと判断し、サイド1面につき一本入れたら、十分な強度を得られた。最初はステーで屋上フェンスと繋げて固定が必要かと想像していたが、アンテナエレメントを含めた重心が十分下部にあり、上下の重量バランスが極めて安定していると判断し、これでしばらく運用することとした。
Pic.-5 Lower part of DXC-ME
上の写真は、DXC-ME の根元の部分。オリジナルのDXC-E の部材の Radial plate と Driven plate をそのまま使用している。下の穴の空いた板に載せているだけ。DXC-ME の重量がかなりあるので、これが悪天候などで外れることは、まず無いと判断。 ラジアル線はAmazon Basic のスピーカー線で作成した。D XC-E についていたラジアル線は、HIRO-C1 で先に使用していたため。ここは部材の違いはないのではないかと判断している。
Pic.-6 Wooden guy plate instead of the original DXC-E’s guy plate.
上の写真は、上の保持板に開けたエレメントを通す Guy Plate。現場でドリルで必要なサイズの穴をあけ、そこにエレメントを通すだけの構造なので、いかようにも加工ができるお手軽な方法。最終的には6箇所程度、穴あけをした。
Pic.-7 Three vertical antenna elements can be seen.
上の写真は、木製ガイプレートの穴を通ったエレメントが吊り下げ用のプラスチック製紐を目指して垂直に立ち上がっているのがわかる。
Pic.-8 The same. Three vertical antenna elements.
上の写真は、Pic.-7と同じもの。両サイドのタワーから、吊り下げ用の横方向のプラスチック製紐も写っている。
Pic.-12 View of antennas at the roof from the ground
上の写真は、地上より見た屋上のアンテナ群。写真をクリックして拡大すると、DXC-ME の3本の垂直エレメントが視認できる。
§1-5 調整と測定
14,18,21MHz の3本のアンテナエレメントを調整する。
(1) 最初に大まかにセット
(2) エレメント長の微調整と各ポイントでの SWR 他の詳細測定
ここで「各ポイント」とは以下のこと。
a: 微調整前のRig 直前
b: 微調整前の driven plate 直下
c: 微調整後の driven plate 直下
d: 微調整後の Rig 直前
e: 微調整後の Rig 内蔵の SWR 計 without Rig’s tuner
f: 微調整後の Rig 内蔵の SWR計 with Rig’s tuner
g: 微調整後の 外部 SWR 計 without Rig’s tuner
h: 微調整後の 外部 SWR 計 with Rig’s tuner
i: 微調整後の 外部 POWER 計 送信波電力 with Rig’s tuner
j: 微調整後の 外部 POWER 計 反射波電力 with Rig’s tuner
SWR 測定は以下の測定器を用いた
ア: NanoVNA-H4
イ: COMET CAA-500 Mark Ⅱ
ウ: Rig (ICOM IC-7610M) 内蔵の SWR計(上記 e & f)
エ: DIAMOND SX-600(上記 g, h, i & j、接続方法は下図)
§1-5-1 14MHz
§ 1-5-0 結果
14MHz のエレメント長についてはすでにベストで、長さ調整不要。RIG 前で SWR 2.1程度で、RIG 内 SWR 計では 1.2、RIG 内 Tuner を使用して 1.0 で実用可能。以下、実測データを添付する。
§1-5-1-a 微調整前のRig 直前
14.1MHz で SWR 2.14 by NanoVNA, wide bandwidth
14.2MHz で SWR 2.1 by COMET, wide bandwidth
NanoVNA と COMET で差異は無い
§1-5-1-b 微調整前の driven plate 直下
14.2MHz で SWR 2.26 by NanoVNA, wide bandwidth
14.2MHz で SWR 2.2 by COMET, wide bandwidth
NanoVNA と COMET で差異は無い
余談だが、NanoVNA は画面が暗いため、屋内なら大丈夫だが、屋外で撮影すると反射が強く入り、写真記録に残すのが大変困難。で、調べていると、NanoVNA Saver なるスクリーンキャプチャ機能が出ているようなので、いずれインストールしてみようとは思うが。。
§1-5-1-c 微調整後の driven plate 直下
§1-5-1-d 微調整後の Rig 直前
微調整は作業効率のため、DXC-ME の全てのエレメント長(14,18,21 MHz)を一緒に行うのに対して、本稿ではまず 14MHz でのデーターだけを抜き出して記述する。従って掲載の写真の内容は、他の周波数を含んだり、全体の内容に戻ることがある。
さて、14MHz は微調整の必要がなかったが、Rig直前で 14 を含めて全体を俯瞰してみる。なお、ここでの測定と撮影は 09/17 の時点のものである。
測定レンジは 1-150 MHz。これだけの bandwidth になると、NanoVNA の測定周波数は極めて荒くなるので、左上に示される黄色の測定値を絶対に採用してはいけない。これは黄逆三角のポイントをずらした以下の2枚も同様。ただ、ここで重要なのは、1-150 MHz のワイドレンジにおいて、今の DXC-ME の SWR が如何なる傾向を持っているかを俯瞰できることだ。
左の三つの落ちているところは、エレメント調整を行った 14,18,21 MHz。
で、左から五番目の落ちているところの周波数に黄1を合わせてみると、約53MHz だ。
Quarter wave length antenna の共振高調波はその3倍なので割り算すると
53 / 3 = 17.7
なので、おそらく18MHz のエレメントが 53MHz あたりでも使えているのではないか、今後調べてみる価値があることがわかる。これは全体を俯瞰した成果だと思う。
さてここからは、測定レンジを狭めて、より正確なSWR を測定していく。
以下の3枚、まずは10-25MHz にbandwidth を狭めた時のもの。14,18, 21 の底の測定精度が、上の写真とは異なり、信頼度が上がったと思う。
ではさらに測定レンジを狭め、この項目のタイトル通り、14 MHz にフォーカスして、より高い精度で測定を進める。
上の写真は 12-16 MHz で測定したもの。左上黄が示すSWR値は 2.05 と、10-25MHzレンジで測定した値と同じだ。これの意味するところは、25-10=15(MHz) の bandwidth は十分に採用できるSWR値を示していると言うことだ。
上の写真は、中央値を14.2MHz に変えて表示させた時のもの。表示スパンは 1MHz と狭く、ボトムにフォーカスしている線だ。一つ前の写真のボトムの拡大写真と同じ意味だ。
§1-5-1-e 微調整後の Rig 内蔵 SWR 計 Rig’s a-tuner無
14.2MHz で SWR 1.2
上の写真は9/14 に測定した写真。SWR が1.2 を指しているが、
翌日の 9/15 に測定してみると、SWR 1.4 程度であった。昨夜は雨が降っていたが、屋上のアースの状況が変わったためなのか?
矢印は
緑 TUNER OFFであることがわかる
黄 送信中であることがわかる
赤 SWR
§1-5-1-f 微調整後の Rig 内蔵SWR計 Rig’s a-tuner有
14.2 MHz で SWR 1.0
§1-5-1-g 微調整後の外部 SWR 計 without Rig’s tuner
14.2MHz で 外部SWR計は 2.2 程度。一方 RIG 内 SWR は 1.3から1.4 程度を示している。この差の理由は、たとえRIG 内の Tuner をOFF にしていても、RIG 保護の回路が自動的に働いていて、あるレベルを超えた反射波をカットしているためか?
§1-5-1-h 微調整後の外部 SWR 計 with Rig’s tuner
14.2MHz で外部SWR計はSWR 2.4程度。一方 RIG内 SWR は1.0。RIG 内 TunerのスイッチをONにすると、RIGへの反射波を完全にカットしている状態、と思われる。
つまり、ここでは、アンテナと同軸ケーブルも含めたトータルシステムとしてのSWR は 2.4で、RIG 保護回路(つまり Tuner)のため RIGではみかけの上 SWR 1.0 と言うことだと思う。
これは、外部のTuner でも同じことで、単にRIG内蔵Tuner よりも Tuning 能力が高い、と言うことだと思う。
§1-5-1-i 微調整後の外部 POWER 計送信波電力 with Rig’s tuner
オリジナルの写真でPOWER計の右が切れていたので写っていないが、これは送信波電力を測定している。
下の写真の意味するところは、RIG の出力を 10% すなわち 5W とし、POWER 計での送信出力を測定すると 5.5W程度を示している。
§1-5-1-i 微調整後の 外部 POWER 計 反射波電力 with Rig’s tuner
で、核心のその時の反射波の値は、0.9W 程度と読み取れる。
14 MHz でのこのアンテナの結論は、5.5W 入力して 0.9W 帰ってくるので、差し引きして 5.5 – 0.9 = 4.6 W が空中に放射された電磁気エネルギーと同軸やアンテナやコネクターなどで変換された熱エネルギー の和、と言うことになる。
放射された電磁気エネルギーと上の熱エネルギーの割合がどれくらいなのか知りたい、と言うことが次のテーマとして当然、上がってくる。
§1-5-2 18MHz
§ 1-5-2 結果
§1-5-2-a 微調整前のRig 直前
§1-5-2-b 微調整前の driven plate 直下
§1-5-1-c 微調整後の driven plate 直下
§1-5-1-d 微調整後の Rig 直前
§1-5-2-e 微調整後の Rig 内蔵 SWR 計 Rig’s a-tuner無
§1-5-2-f 微調整後の Rig 内蔵SWR計 Rig’s a-tuner有
§1-5-3 21MHz
§ 1-5-3 結果
§1-5-3-a 微調整前のRig 直前
§1-5-3-b 微調整前の driven plate 直下
§1-5-3-c 微調整後の driven plate 直下
§1-5-3-d 微調整後の Rig 直前
§1-5-3-e 微調整後の Rig 内蔵 SWR 計 Rig’s a-tuner無
§1-5-3-f 微調整後の Rig 内蔵SWR計 Rig’s a-tuner有
§ 2 HIRO-C1
運用周波数は7 & 14MHz
§3 HIRO-C2
周波数は3.5 & 7MHz
ただし、執筆時点で 7MHz は調整中
QSO
すでに日本全国とQSOを行なってはいるが、2021年9月8日の朝、フレンド局が神奈川県逗子市の鷹取山にて移動運用しているので、6パターンで交信をトライした結果が以下で、非常に示唆に富んでいるのでここで特に取り上げて考察したい。
6トライしたが、残念ながら交信は全て不成立。しかしながら、それぞれを詳細に分析すると、今後のロードマップ作成の参考になる事、多数。RSレポートは Internet の Messenger で交換。
フレンド局の環境は 5W 送信、それとDX Commander Expedition。公園での運用のためか、ノイズレベルは 0か1らしい。
当局の運用場所はホームの東京都文京区。鷹取山だと直線距離で約48Km。出力は50W。
結果は、当局への入感は21MHz でかすかに聴こえただけで、他のトライは全て入感無し。しかしフレンド局では、14MHz with DXC-ME で53、21MHz with DXC-MEで51、7MHz with HIRO-C1 で41を、それぞれ入感していた。
考察
- LOG sheetにNoise level を記載する欄を設けたい
- HIRO-C2 に7MHz を加えたい(早速、着手し、調整中)
- DXC-ME の 14 & 21 MHz は本日のトップスコア
- 先方が5W出力の垂直4分の1波長でArea 1 to 1 では文京区でのノイズレベルに埋もれてしまう。SN Ratio が限りなく 0 のようだ
- RIGのIC-7610M(50W) を 100W にアップグレードする意味はあるのではないか
- CW をまずはフレンド局とだけで、できるようにしたい
- 今日はDipole ant. との比較はできなかった
- Yagi ant等のビームアンテナであれば、どれくらい浮き上がってくるのだろうか?
- QSOは成立しなかったが、何が問題なのかは、このようなギリギリの状況でこそ浮かび上がってくることを実感
- 自分のRSレポートのSignal の書き方はこれで良いのだろうか?例えばback ground noise level が 7 の場合、信号が聞き取れなかったとして、書くべきレポートは 00 なのか、それとも 07 なのか?
- 日々の各バンドのNoise level を logging して、ホームにおける傾向を浮かび上がらせることは、時々の運用において重要な情報源になるのではないか?